<STORY>
無職になってしまった高級クラブの用心棒トニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。2人は <黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイド = グリーンブック> を頼りに出発するのだが…。
価値観が全く違う2人の旅、心配だらけ…

そもそも、文化習慣や価値観が大きく異なる2人の意見はまったく合わないし、最初はケンカだらけ。雇い主とはいえ、舐められてたまるかと、黒人への偏見丸出し、いつもの態度を崩さないトニー。
何度か旅を進めていくうちに、ドクター・シャーリーのピアノ演奏やプロフェッショナルな態度を見たトニーは、次第に彼を受け入れ、態度を改めていく。そして時折彼が見せる孤独感の正体は何なのか? と、彼という人間に対しても、徐々に興味を持ち始めてゆく。
アイデンティティについて

黒人への偏見がなくなっていくトニーの描写と同時に、実は偏見を持っていたのはシャーリーも同様で、乱暴な男と思っていたトニーが、深い愛情を持った人間だということに気づきはじめ、彼への態度や認識を次第に変えていくところが実に面白いポイント。
そしてこのストーリーの本当のテーマは、人種差別という時代背景の内側、人間としてのアイデンティティの在り方、自分や人を思う気持ちだということが分かってくるのです。

コメディの名監督が実話を映画化

差別やダイバーシティ(多様性)というテーマの設定上、どうしてもトーンが重いかな、と思いがちですが、まったく説教くさくないところが驚き。爽やかな感動と希望でラストを締めくくる展開は、正にコメディの名監督、ピーター・ファレリー監督の集大成!
2時間ほどのストーリーに、映画のいいところがギュッと詰まった、夢と希望を与えてくれる作品です。ネタバレしちゃいそうなので多くは語りませんが、クリスマスシーズンに鑑賞するのがオススメですっ!

グリーンブック
原題:「Green Book」2018年製作/130分/アメリカ
監督:ピーター・ファレリー
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ/リンダ・カーデリーニ